当公園の乗馬施設で活動している岐阜市乗馬会の会員さんと、乗馬施設の馬が、今年の9月に開催された、第54回 岐阜県馬術選手権大会の 第1競技 馬場馬術A3課目 婦人・少年の部で優勝されました。
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青いリボンをかけるのは嫌がった |
と言われても、乗馬に疎い我々には、なにをどうしてどうなったら「ゆうしょう」なのかイメージが湧きません。
競馬と違い、早い者勝ちのタイムレースではない、くらいは分かります。
また、第1やA3があるので、第2もB1もあるだろうなとも思う。
逆に言えばそこまで。
第3や第4もあるのか、A5やF11はどうなんだとなるとさっぱり分かりません。
そこで、公益社団法人日本馬術連盟のページで競技内容を確認してみました。
まず分かったのは、第1競技の1は競技の順番で内容ではないということ。
馬場馬術のA3課目というのが種目で、この種目を婦人・少年と言うカテゴリーで競い合ったと言うことです。
で、馬場馬術と言うのはどんな競技か。
まず、馬場馬術は思いっきり走ったりしません、競馬じゃないくらいは分かるので、これは想定内。
跳んだりもしません。
知ってましたか、あれは、障害飛越競技という別の競技らしいです。
馬場馬術は、規定の馬場内(A3課目の場合は20m×40m、国際規定では20m×60m)を常歩:なみあし、速歩:はやあし、駈歩:かけあし(競技のグレードが上がれば、それにさまざまなダンスみたいなステップも加わり)の組み合わせで馬を回し、あるいは決められた地点で止めて、その動作の美しさや、人馬の一体感を何人かの審査員で評価して、ポイントをつけると言う競技のようです。(あくまでも、素人がネットで得た知識から推測した個人的な意見ですので、なんと言うか、よろしくお願いします)
Aの科目は馬場馬術の基礎の部分の習熟度を試されるようで、決められた動作を決められた順序とコースでこなしていく、フィギアスケートの規定競技に似た競技だそうです。(競技のレベルが上がると、フィギアのフリーみたいな自由演技で華麗なステップを披露という種目もある…ようです。)
フィギアだと3回転半ジャンップ!!とか跳ぶのが花なんで、跳ぶのが無い馬場馬術は、ソシアルダンスとか、アイスダンス(そっちのことも良く知りませんが、イメージで連想)に似ている気がします。
決められた動作を決められた順序でと言うところは操法の大会に似た感じ、と言うのは田舎の長男にしか分からないたとえ。
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乗馬競技のときの敬礼 |
JEF《Japan Equestrian Federation:公益社団法人 日本馬術連盟》運動課目を見ると、競技はA 、L、M、Sのグレードに分かれて、更に、Aの課目は1から5まで。
ですからA3は基礎の中級と言う感じかな。
もともと知らないことを資料を読んだ受け売りで人に説明するのは難しいと言うか不安ですが以上で競技の説明を終らせていただきます。
いまさらですが、百聞は一見に如かず(又聞きじゃ、聞自体怪しいですが)
youtubeで見つけたA3の様子をご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=hEc_9A6KZLs
馬場馬術競技の詳細については、直接大もとの「公益社団法人 日本馬術協会」
馬場馬術競技の項を一度見ていただいたほうが良いと思います。
https://www.equitation-japan.com/rules_02.html
と言うことで、A3課目、基礎の中級の参加人数4名。
ふーん…、
申し訳ないけど乗馬のことを知らない者には、正直ふーん…(ごめんなさい)
まあ、確かに「快挙!!!」と言うような派手な勝利ではないし、実際優勝した大川さんにしても、こっちが聞いたから答えてくれたわけで、欣喜雀躍、優勝で小躍りと言うわけではありませんでした。
それを、すごいですね、ブログに載せましょう、写真もあったほうがいいなと言ったのは、こっち。
なのに聞いといて「ふーん…」は大変失礼な話だとは思います。
実は、大川さん自身は、乗馬の指導員の資格を持ってらっしゃるので、このクラスはちょっと役不足というか、このくらいの基礎の競技なら、本命で優勝だったのではないかと言う気がして思わず、「ふーん…」となったわけです。(もうしつこい、反省)
しかし、お話を聞いていくと、勝てるとは思わなかった試合に勝たと、とても喜んでらっしゃる様子。
はて、何故だ。
ここが素人には分からない、「ばばばじゅつ」の深さ…。 かもしれない。
じつは、馬場馬術の競技は、「馬の調教進度」によってクラスが分かれていて、馬の習熟度、つまり日ごろの馬の調教の結果が問われる競技なのだそうです。
いかに乗り手が経験豊富でも、馬が未熟であれば良い成績は出せない、如何に調教された馬であるかが評価の対象。
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馬が、自分から歩いているような感じが良い乗り方 |
今回の優勝馬、フロスティ号、満15歳、去勢(乗馬馬は去勢馬が多いようです)は、うちに来て2年。
9頭いる乗馬厩舎の馬の中では一番の新参者で、馬場馬術の競技は初出場。
そして彼は、岐阜乗馬会の会員の皆さんやうちの厩務員からはあのフロスティが「ゆうしょう?!」と言われる、ちょっと問題のある馬なのです。
つぶらな瞳で、牙は無い、体はでかいですが、馬は、ホントに可愛い動物。
眺めるだけならどの馬だって全部可愛いですみますが、しかし、間近で馬の世話をしなければならないとそうとばかりは言っていられません。
体重500kg(くらい)は、圧倒的な重量感。
背丈だってでかくて、頭上から見下ろされると威圧感ありまくり。
ブホホホォと荒い鼻息とともにむき出しになる、上下ビッチリ揃ったでっかい歯は、牙では無いけれど相当な凶器。
実際、もし、ガブリと噛まれれば指がなくなってしまうくらいの威力があります。
そしてあの脚、足の裏にはおまけにカッタイ蹄鉄付き。
あれで蹴られたりしたら、骨折だけではすまないことだってあります。
と言うことで、従順な馬ならいいけど、そうでなければ、大きな馬はケッコウ恐くて危険な生き物です。
で、フロスティがそういう危険なとこのある馬。
競馬場でも手を焼いた存在だったようで、扱いが大変との条件付で譲渡いただいた馬でした。
あちらでは、芦毛で立派な体格を生かし、レースの前に競走馬の先導馬をしていたそうなので、扱いが大変といってもそれなりにという思いもあったようですが、来て見てびっくり。
人が近づくと、噛むし、蹴るしで、うちのベテランの厩務員が、危なくて手に負えないと思ったといいます。
実際、今でも、フロスティには、用も無いのに手を出さないようにと注意されます。
と言うとフロスティが、柵を超えて脱走するとか、人を乗せると振り落とすとか、西部劇に出てくるような暴れ馬みたいと思われるかもしれません。でも、そういう馬とは違う(そこまでの暴れ馬はいないと言うか、いられないと言うか)。
また、気が強くて、他の馬とすぐにけんかをするような暴れん坊がうちには居ますが、フロスティは、そういう気の強い馬ではありません。
馬房から出して、鞍をつけたりのような身の回りの世話を嫌がり、近くの人を蹴ろうとしたり噛もうとしたりするのでものすごく気を使う。
扱いに危険が伴う馬です。
性格が荒いとか、乱暴なのではなくて、その逆、気が小さくて、人が恐く、怯えて取乱すのではないかと言うのが大川さんの見立です。
競馬場では先導馬をやっていたので、うちに来たときから乗れるには乗れる。
と言うか、不思議なことに、乗られて嫌がる馬では無いのだそうです。
人を乗せて歩くときには従順で、大川さんに言わせれば、乗馬ウマとしての適正を感じさせるような馬という印象だったそうです。
人が恐いくせに、人を乗せる乗馬用の馬としては筋が良い。
乗せるのは良いけど、触られるのは嫌。
矛盾した性格を持つ複雑な彼です。
うちの厩務員が、エサをやって世話をしてはいましたが、触るな危険、みたいな馬では、いつ事故が起こるかわからない。
事故がおきればもちろん、事故の危険が高いような馬では、ここに居られなくなるし、ここに居られなければ彼にはもう居場所はどこにもありません。
ここに居られるような馬にならなければ、フロスティに明日は無いということです。
なんとか更生しないといけないのですが、複数の人が手を出すのは危ないので、調教は、ベテランの大川さん一人に限ることになりました。
調教の最初の頃は、噛まれて縫うような怪我をされたこともあり、もろに蹴られることはなくとも、あざになる様なことは何度か経験。
このあたりの2年間の話は、又一度詳しく伺いたいなと思いますが、大川さんかかりきりの調教と言うか世話が続きました。
大川さんは、どの馬に対しても、穏やかにやさしく接してらっしゃるので、上手く気持ちの通じないフロスティにも、「飴と鞭」の鞭の部分は無かったと思います。
北風と太陽ならば、太陽政策の世話が続きました。
平成23年5月にやってきて丸2年、厩務員には、昔はほんとに手に負えない馬だったけど、と言われるくらいに態度がよくなりました。
何が良かったかと言って、秘訣みたいなものが何かひとつあると言うわけではないようですが、じわじわと太陽政策が効いてきたのでしょう。
そして、物事が上手く回っていくときには、幸運とか良い出会いも呼び込むようで2つの幸運が大川さんとフロスティに訪れました(せとうちじゃくちょうか)。
1つはメラノーマの快癒。
芦毛の馬にはよくある病気で、命にかかわるものではないそうですが皮膚表面にできる潰瘍みたいなもの。
それが、フロスティの胴のちょうど鞍を締めるための腹帯を巻く位置にあり、腹帯がすれて血が出ることがあったそうです。
これが痛くて鞍をつけられるのを嫌がっていたのではないかと思われていた病気です。
それがだんだん直っていって、はげていたところに毛が生えて、血がにじまなくなりました。
大川さんによれば、フロスティのメラノーマの症状から鑑みて、大変珍しいことらしいです。
もうひとつは、馬の世話をするためのユニークな技術であるTタッチの講習を昨年と今年、うちの公園で行えたこと。
うちで講習を行ったので、うちの馬をTタッチの教材にしていただけました。
というわけで、先生にフロスティのことも見ていただきました。
講師のデビー・ポッツ先生がフロスティに触れると、普段そう簡単に人に体を触れさせないはずのフロスティが先生に身をゆだねていきました。
大川さんだけでなく、講習をお手伝いしていた岐阜乗馬会のみんなが奇跡かと思ったそうです。
大川さんは、ポッツ先生に大人しく身をゆだねるフロスティを見て、彼に寄り添い、おびえを取り除いてやれば、彼が変われる、そして本来の素直な性格に戻ってくれると信じることができました。
Tタッチについては、
http://www.ttouch.jp/ をご覧ください。
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以前は足元でこんな仕事は危険でできませんでした |
そんなこんなの幸運もあり、フロスティーはこの秋、競技会デビュー。
頑張って課題をこなしたフロスティですが、気弱な性格もしっかり発揮して、競技の前には緊張で元気がなくなったそうですし、本番では、審査員の方々の前へ進み出るはずが、知らない人が並んでいるのにびびって後ずさりして失点したそうです。
ビビリの性格どおり、競技前半は、緊張で失点を重ねたそうですが、競技が進むに連れて、静止の姿勢のときふらつかずにきれいに立ち、足の位置もあるべき形に治まると言うような、彼の良いところが発揮できて、思わぬ優勝、となったそうです。
あのフロスティがここまでやれたと言うことで、大川さんにとっては、この2年に成果が付いてきたし、フロスティにとっては、うちで必要とされる才能を発揮できたというわけで、とても価値のある優勝でした。
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足をそろえて立つのがポイントです。 |
噛まれたり蹴られたりしながらもフロスティをやさしく面倒を見た大川さんの話を聞いていると、大川さんは多分、フロスティのことが好きなのだと思います。
大川さん一人に調教を任されるそれよりも前、たぶん一目惚れ、最初っからずっと好きだったんじゃないかな。
気が小さくて、繊細で、だから怯えて人を傷つけるけど、ホントの彼は、堂々とした芦毛の立ち姿の美しい馬。
今はちょっとやさぐれて日陰の道を歩いているけれど、いつか彼は輝ける。
ずっとそう信じてきた。
好きだったから。
人間同士では、そういう献身を無にするような話をよく耳にしますが、彼女の彼は、やればできるやつでした。
優勝おめでとうございます。
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正面から寄ってこられるのは嫌いらしいです。 |